三章三節:金融統制資本主義へ

 資本主義と社会主義という一見対立する思想は実はどちらも《権力が誰かの幸せのために自由と平等を制限する経済体制》だと二章一節で論じたが、全銀行国有化政策と貨幣発行権を活用する政府は、国民の幸せのために金融機関や投資家の自由や平等を制限する強力な権力だ。この強さゆえに国債残高問題という難題を解決する力を秘めているのだが、その力の使い方を誤れば、日本経済は悪い方向へ簡単に振れてしまうということも肝に銘じなければならない。政府を国民のために働かせるには、やはり法律で物価安定目標を明確に数値で定め、政府と日銀の行動を監視する第三の機関の設置も必要だろう。


 私が本論文で提案してきた経済体制は、金融という分野のみを政府が統制している点で現行の資本主義とも完全な計画経済と違うため、金融統制資本主義と呼ぶべきだろう。そこでは金融という水道や電気と同じくらい重要な社会的インフラを政府という一つの権力が適切に統制し、国民は金融以外の分野で安心して健全な競争が行えるから、政府が国民の幸せために働いている限り、国の発展は間違いのないものだと私は確信している。


あとがき