民間銀行が行っている詐欺

まずは、民有の銀行が行っている詐欺について整理しましょう。

 

①銀行は、私たちの経済活動に欠かせない存在です。銀行による決済が一般化している現代社会において、あなたが銀行を利用しなければ、現金を手渡しできる範囲でしか売買をすることができず、あなたは経済競争で生き残ることはできません。したがって、私たちは銀行を利用せざるをえないのです。

 

②それをいいことに、銀行は私たちの最初の預金の何倍ものお金を利子つきで貸し出しています。

 

③投資が上手くいった場合、銀行は利子分の莫大なお金を儲けることができます。「平均したら、利子なんてほんの数%でしょ?」と思った人は、ちょっと計算してみてください。仮に私たちの最初の預金をAとして、銀行がその10倍の10Aを5%の金利で貸し出したとしましょう。そして、私たちが全ての借金を真面目に返済したとすると、銀行は10A×5%=A/2の利益を手に入れる一方、私たちにはA-(A/2)=A/2のお金しか残りません。つまり、借金を返し終わる頃には、銀行は私たちの資産と同じ額の資産を手に入れることになるのです。

 

実際、銀行が最初の預金の10倍貸し出すという仮定は現実的です。たとえば、三菱東京UFJ銀行の平成25年の中間連結財務諸表を見ると、現金預け金(≒私たちの最初の預金)を9倍すれば貸出と有価証券の合計と同規模になります。なお、銀行が有価証券を買うのは貸出と同じようなもので、有価証券を買うのに使ったお金が銀行に預金されれば、結局は銀行の投資資金として再利用されます。預金が先に増えるのが貸出で、後に増えるのが有価証券の購入という違いだけです。(銀行業がどれだけ儲かるかの実例は、「銀行と他業種の純利益を比較」の項をご覧ください)

 

④そして、銀行には最も安全な投資先として国債が存在します。政府は、国にあるどんな企業よりも資金力があり、潰れるとしても国の中でいちばん最後です。日本の国債残高が1000兆円を超えたと騒がれていても、国債に殺到する投資家が多く、国債金利がずっと低下傾向にあるのは、国債を購入した人が儲かるからです。

 

ここで問題なのは、本来、政府は借金せずにお金を発行することができるのに、わざわざ借金である国債を選び、その返済のために私たちから税金を集め、銀行などの投資家を儲けさせていることです。

 

「お金を発行すれば必ずインフレになる」と思う人もいるかもしれませんが、お金を発行しても必ずしもインフレにはなりません。インフレとは、物の値段が上がることです。インフレになるかどうかは、物を売る側がどう値段をつけるかによります。お金を発行しても、私たちがあまりお金を使わなければ、売る側は高い値段では売れないと考え、値段を据え置くでしょう。逆に、私たちがお金をバンバン使えば、売る側は高い値段でも売れると判断して、値段をあげるでしょう。それに、なにも緊急の理由がなくても値段を上げたり下げたりするかもしれません。基本的に自由な市場経済を導入している国において、値段の決め方は売る側の自由です。

 

また、1000兆円以上もの国債という資産が市場に投入され、1000兆円以上ものお金を政府が消費したのに、インフレどころかデフレになっていった日本という国を知っていれば、「お金を発行すれば必ずインフレになる」という説が間違っていると分かるでしょう。

 

国債を発行し続ける日本でインフレが起きないのは、売るものがあふれているのに、お金はあまり使われない(貯金されている)からです。

 

一方、ジンバブエや第一次世界大戦直後のドイツでハイパーインフレが起きたのは、売るものが不足しているのにお金がたくさん使われたからです。

 

さて、物価=需要/供給という基本的な傾向を理解すれば、お金の発行と国債の発行は、物価に与える直接的な影響という点で違いがないと分かるでしょう。むしろ、国債のほうが価格が変動する不安定な資産なので、市場に不安を与え、物価を乱しかねないと言えるでしょう。

 

国債について銀行がやっていることを総括すると、

(1)銀行は私たちの預金を使って最も安全に儲かる国債を購入し、

(2)私たちから集めた税金からその利子を受け取り、

(3)市場に不安を与える不安定な国債という資産を黙認し、

(4)政府がお金を発行するという国債よりも優れた財源調達の方法を隠しているのです。

 

⑤投資が失敗した場合も、政府を操る人間に守られた銀行は潰れません。私たちが銀行を利用せざるをえないのをいいことに、「大きすぎて潰せない」と開き直るわけです。2008年のリーマンショックのときに、リーマンブラザーズはそのまま破綻させたにもかかわらず、同じく投資銀行のゴールドマンサックスなどは公的資金、つまり税金を使って救済したのが分かりやすい例です。アメリカ政府はTARP(不良資産救済プログラム)によって7000億ドルを公的資金として用意しました。返済の途中経過は、ProPublicaのサイトで見ることができます。Profit/Net Outstandingと書かれた項目は、公的資金を引いた利益を表していて、順調に回復した企業と没落した企業に分かれています。リーマンショックが計画的に引き起こされた金融戦争と見れば、没落した企業は生かさず殺さずで、回復した企業の傘下に入るよう促されているとも考えられます。真相はともかく、権力者によって守られた銀行は、築き上げた詐欺の仕組みさえあれば、公的資金を返済して、何度でも完全復活することができます。この不死身の銀行を創り上げているのが中央銀行です。公的資金の額が大きすぎれば、その年の税金で賄いきれませんから、通貨発行権を中央銀行に奪われた政府は国債を発行して資金調達をするように仕向けられるわけですが、中央銀行は無限の資金力でその国債を購入できます。

 

ちなみに、リーマンショックの場合は、投資の失敗というより、計画的犯行といえるでしょう。リーマンブラザーズが潰れたことで大儲けしたヤツらがいるからです。大儲けの仕組みは実に単純で、保険金殺人と一緒です。どういうことかというと、「法人の生命保険」ともいえるCDS(クレジットデフォルトスワップ)をリーマン破綻に備えて大量に購入し、信用度を偽装したサブプライムローンが組み込まれた危険な金融商品をリーマンにつかませ、リーマン破綻後にCDSを販売した保険会社のAIGを公的資金で救済すれば、その公的資金からCDSの「保険金」が支払われる仕組みです。大儲けしたヤツらは、これと同じことを他の企業に対しても行ったり、株の空売りをしたりと、とにかくあらゆる手段で計画的に儲けたわけです。

 

以上、①②③④⑤から、

民間銀行が金融決済システムというすべての人のためのインフラを利用して、私たちのお金を使った投資(ギャンブル)から莫大な利益を上げていることが分かるでしょう。そして、民間銀行は、投資(ギャンブル)が失敗しても人々から集めた税金で埋め合わせることができます。実際、普段から国債の購入という手段で税金を吸い取っていますから、そんなの朝飯前です。 

こんな寄生虫のような民間銀行をそのままにしていいわけがありません。公共の利益を守る政府が樹立されたなら、すぐに全銀行を国有化して統合するべきです!

 

全銀行の国有統合化がもたらす効果として、

 

①物価の安定

②預金の全額補償

③国民の税負担軽減

④銀行業務の効率化とサービスの向上

⑤日本国債の累積問題の解決

 

が挙げられます。

 

①全ての銀行が国有統合化されれば、銀行の信用創造量を管理することができるので、特定の対象へ投資が集中するのを避けることができます。

 

②政府は貨幣発行権=無限の財源を持っているので、全ての預金を保証することができます。そもそも、銀行が破綻した時に元本1000万円とその利息までの預金しか保護されない(ペイオフ)というのは窃盗以外の何ものでもありません。

 

③今まで民間銀行の懐に入っていたお金を政府の財源として使えますから、国民の税負担を軽減することも可能です。

 

④国内すべての銀行が国有統合化されれば、決済業務が最も効率化されるし、預金者はたくさんの通帳や印鑑やカードを持ち歩く必要もなく、全国どこにいても同じサービスが受けられるようになります。利用者の数に対して銀行の支店が多すぎる場所では、支店の数を減らせばいいし、業務を効率化した分だけ人員に余裕ができ、土日祝日の営業も可能になれば利便性が向上します。(銀行法第15条を改正する必要あり)

 

⑤全ての銀行を国有化すれば、日本国債をより安全に消化することができます。実は、民間銀行が保有する日本国債を償還するよりも、銀行そのものを丸ごと購入する方が安いのです。銀行を国有化して、政府が銀行の持つ日本国債を同額の1枚1円の無利子無期限電子国債と交換し、預金の引き出しがあったときにだけ政府が換金をすれば、国債の償還に関しては何の問題もなくなります。問題は、銀行を購入するときに市場に投入する資金がインフレを起こさないように制御することですが、全銀行を国有化しているので、考え得る中で最強の制御を行うことができます。

 

なお、国債の保有者として銀行の次に大きな割合を占める保険会社も全て国有化するのが望ましいでしょう。国債の安全な消化以外にも、絶対に潰れない国有の保険会社をつくることで、国民生活の安定に大きく貢献できます。複数の民間保険会社が利益を最優先に競争すると、いかに保険料を受け取りながら保険金を払わないかの競争になりがちだからです。

 

ここで、全銀行の国有化の財源はどうするのか?という疑問に答えておきます。実は、日本政府の財源は、貨幣発行権を行使すれば無限にあるのです。日本国の政府は貨幣発行権を持っており、実際に貨幣(コイン)を流通させています。紙幣が日本銀行のものなのに対し、貨幣は日本政府のものなのです。法的根拠としては、「通貨の単位及び貨幣の発行に関する法律」(昭和62年、法律第42号)の第4条第1項「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」です。同法には貨幣発行額の上限や発行額が負債に計上されることを示す文言は一切ありません。

 

以上で挙げた説明は、民間銀行の行っている詐欺を止めるために全銀行を国有化する政策の概要です。詳細については、「日本国債累積問題の解決」の項で論じているので、そちらをご覧ください。

 

また、支配者から見た中央銀行の役割についての項もご覧ください。